はじめに
2025年12月13日、宮古島市保健センターにて「子ども・子育てゆんたく会 Vol.2」を開催しました。
今回のテーマは、
「子どもと親のウェルビーイングを育む島へ〜“しあわせ”が広がる関係について、学び・話し合う時間」
EVOL株式会社 代表取締役の前野 マドカ さんを講師に迎え、お話をうかがいました。
前野 マドカ さんについて
EVOL株式会社 代表取締役CEO
武蔵野大学ウェルビーイング学部 客員教授
幸せを広めるワークショップ、コンサルティング、研修活動およびフィールドワーク研究・事業展開・執筆活動を行っている。
システムデザイン・マネジメント学、幸福学の研究者である前野隆司氏の妻。二児の母
著書
『幸せになる習慣』(すばる舎、2024年)
『きみだけの幸せってなんだろう』(WAVE出版、2024年)
『ウェルビーイング』(日本経済新聞出版、2022年)など


ウェルビーイングって、結局どういうこと?
今回のキーワードは「ウェルビーイング(Well-being)」
最近よく耳にするこの言葉ですが、直訳すると「幸福」や「良い状態」を指します 。
マドカさんいわく、ウェルビーイングは「身体的、精神的、社会的に良い状態にあること」 。
単なる一瞬の「楽しい!」「ラッキー!」という感情(Happiness)だけではなく、生きがいや人生の意義を感じながら、持続的に幸せが続いていく状態を指すそうです。
今、国や教育の現場でも、このウェルビーイングを向上させることが最重要テーマになっています 。
私たちはつい、特別な出来事や手に入れたものの中に幸せを求めがちです。
しかし、本当に大切なのは、生きがいや人生の意義を感じながら、心が満たされた状態がしなやかに続いていくこと。
この「持続性」という視点を持つことで、日常の何気ない瞬間に流れている「線」の豊かさに気づけるようになります。
一瞬の爆発的な喜びという「点の幸せ」を追い求めるより、
日々の穏やかな喜びという「線の幸せ」を感じる時間を増やしてみよう。

「幸せ」は、自分たちでコントロールできる
「幸せになれるかどうかは、運や環境次第」と思っていませんか?
実は、幸せについての知識を得て、日々の意識を少し変えるだけで、私たちは自分たちの幸せを育んでいくことができるのだそうです 。
マドカさんは、幸せには「長続きしない幸せ」と「長続きする幸せ」の2種類があると語ります 。
- 長続きしない幸せ(地位財):お金、モノ、役職など、他人と比べられるもの 。
- 長続きする幸せ(非地位財):健康、心の安定、良好な人間関係など 。
もちろんお金やモノも生活を彩る大切な要素ですが、それだけを追い求めても、先ほどお話しした「線の幸せ」は安定しません。
「幸せになりたい」と願うとき、私たちはつい誰かと比べて「自分に足りないもの」を探してしまいます。でも、本当の幸せは、今日健康でいられることや、誰かと笑い合えるといった、すでに足元にある「線の幸せ」をどれだけ深く噛み締められるか、にかかっているのではないでしょうか。
「ないもの」を追うのをやめて、「あるもの」に気づく。
その視点の転換こそが、幸せを自分でコントロールするということ。

明日から意識したい!幸せを支える「4つの因子」
私たちが「線の幸せ」を感じるためのメカニズムとして研究されているのが、次の「4つの因子」です。
これらは、新しく手に入れるべき能力というより、自分の中にある「幸せの種」を見つけるためのアンテナのようなもの。
この4つの視点を持つだけで、日常を噛み締める感度がぐっと高まります。
- 「やってみよう!」因子(自己実現と成長)
夢や目標を持ち、ワクワクしながらチャレンジすること 。 - 「ありがとう!」因子(つながりと感謝)
感謝の気持ちを持ち、他人に親切にすること 。 - 「なんとかなる!」因子(前向きと楽観)
「失敗しても大丈夫」と、ポジティブに捉えること 。 - 「ありのままに!」因子(独立と自分らしさ)
他人と比べず、自分軸を持って自分らしく生きること 。
「幸せになりたい」と外側にばかり目を向けていると、このアンテナはうまく働かなくなってしまいます。
でも、この4つのアンテナを意識的に立ててみることで、「あ、これも幸せだった」「これも感謝できることだった」と、足元にある幸せを噛み締める力が自然と湧いてくるようになるとのこと。
幸せを「追いかける」のではなく、自分の中に「4つのアンテナ」を立てて今ある幸せを噛み締める。その大人の心の余裕こそが、子どもの声を聴くための大切な土台になる。
参加者の声:ゆんたく時間で生まれた「気づき」と「モヤモヤ」
講話の後は、参加者全員で感想をシェアする「ゆんたく時間」を設けました 。マドカさんの「幸せの4つの因子」という視点を得たことで、日常の中に隠れていた課題や願いが次々と言葉になって溢れ出しました。
先生や親が「幸せ」でいられる環境を
先生が幸せでいられるような制度が必要。先生の心に余裕がないと、子どもを丸ごと受け入れることは難しい。
親がやりたいことに子どもを連れて行っても良いんだ、自分の行動に制限をかけなくて良いんだ、と思えて心が軽くなった。
他人の明るさを受け入れられないほど疲弊している人に対し、どう声をかけたら良いのか。社会全体の余裕のなさを感じる。
「自分らしさ」と「比較」の間で
『自分らしい』とは何か、これまで考えたことがなかった。今回の機会に改めて見つめ直したい。
小さい頃に親から兄弟と比較されてやる気を無くした経験がある。自分は子どもに対して、人と比べないようにしたい。
教育現場や社会へのモヤモヤ
保育園では自分の意見を言えていた子が、小学校に上がると『みんなと同じ』であることを求められる状況にモヤモヤする。
宮古島で、思考力や非認知能力を育てる本質的な学びの政策を作ってほしい。

おわりに
「愛する子どもを自分らしく生きる子に育てたいなら、まずは自分が自分らしく生きること 。」
今回のゆんたく会を通して、子どもの権利を守るための土台は、私たち大人のウェルビーイングにあるのだと強く感じました。大人が「こうあるべき」という枠から少し自由になり、自分を大切にすること。その余裕が、子どもの声を聴く力へと変わっていきます。
自分の意見を最初から諦めてしまう子どもを一人も出さないために 。
まずは私たち大人が、今日一日の「美しいもの」を探すところから 、幸せの種をまいていきませんか?